脳が喜ぶ音楽

ASKAバンドの澤近泰輔‏さんのツイッターに、ギタリストの田中義人さんのブログが紹介されていたので、読んでみた。

​【手術から一年】 違和感〜発症まで <第1話>|田中義人 / Yoshito Tanska Official Blog Powered by Ameba

 ジストニアという病気にまつわる壮絶な体験をなさったらしい。私は邦楽には疎いので田中さんのことはこれまで知らなかったのだけれど、そのお話を読んで彼の音楽にかける情熱がひしひしと伝わってきた。その中でも特に、以下の言葉が胸に残った。

とにかく日本人が美徳としている
忍耐強さ、無駄な根性論など、
脳がリラックスする事に逆らう事が
無駄に肉体の疲労を呼び起こしたり
間違った動作を脳が覚えてしまう
キッカケになり得る事をここに
声高に記したい。
本当にその通りである。楽器を演奏するためにはそれなりの訓練が絶対に必要なわけで、特に音楽で生計を立てようとするに至っては血の滲むような練習を積むのだろう。バイオリンとかピアノとか、国際コンクールに入賞する人物は小さな頃から猛烈な特訓をなさるらしい。その結果として奏でられる旋律はもちろん聴く者の魂を癒すわけだけど、そこに至るまでの演奏者の苦労を思うと何かしら複雑な思いもする。まさに骨身を削って音楽を培ってくださっているわけだ。頭が下がります。
 
でも、音楽を長く続けていこうと思ったら無理はよくない。どこそこのコンクールに最年少で云々、という話を聞くたびに私はげんなりする。そんなに先急ぐ必要がどこにあるのだろうか。歳をとってから楽器を習い始めたって別に良いと思う。私の娘は縁あって良い先生と出会いバイオリンを8歳の時に習い始めたが、周囲を見回すと彼女のように遅くはじめる子供はあまりいない。3歳ごろから始めるのが普通らしい。確かに学齢前には時間があるから猛練習には事欠かなかったかもしれないが、人生は長いし続けていけばいつかは周りに追いつけると私は思う。彼女にプロになって欲しいとかいう気持ちは毛頭ないが、アマチュアでもいいからオーケストラに入って演奏できるようになってくれたらいい。そうしたら、ずっと音楽に携わって生きていくだろうから。
 
かくいう私も、子供の頃に手習いでピアノをやらされたくちだけど、高校を卒業して以来演奏からは遠ざかっている。私の主人も、バイオリンを小さな頃から習ったにも関わらず、今ではやっていない。非常に勿体ないことだが、上手にならなかったことへの引け目が私たち二人を楽器から遠ざけた。楽譜を読んで、旋律を拾って、そして楽器を奏でる、ということはそれだけでも充分楽しくやり甲斐のあることである。上手くなくたって、家で一人でやっているぶんにはそれでよいのである。そういった音楽は間違いなく脳が喜ぶ。そんな音楽との付き合い方を、もっと標榜してもらいたい。